Integrated Molecular Profiling of Human Gastric Cancer Identifies DDR2 as a Potential Regulator of Peritoneal Dissemination. 
Kurashige J, et al. 
Sci Rep. 2016 Mar 3;6:22371.

■スキルス胃癌は比較的若年者に発症し、短期間に浸潤・腹膜播種を起こす極めて予後の悪い腫瘍であり、腹膜播種機序については未知な部分が多く、有効な予防法や治療法の確立が待たれる。われわれは胃癌腹膜播腫モデルマウスを構築し、非播種陰性株化細胞に比べ陽性株化細胞において特異的には過剰発現した遺伝子を同定した。他方、Singapore大学との共同研究により胃癌臨床検体においても腹膜播種と関連する同様の変異を有する遺伝子群をもとめ、両者に共通する遺伝子22個を同定した。

■われわれは、東京大学医科学研究所教授 宮野 悟先生、シンガポール大学教授パトリック・タン先生、国立がん研究センター柳原五吉先生、大分大学消化器外科教授 猪股雅史先生、熊本大学外科教授 馬場秀夫先生らと共同研究を行い、腹膜播種モデルマウスを作成し、胃癌腹膜播種を規定する遺伝子としてDDR2を同定した。

■DDR2はTCGAによる解析の結果、胃癌原発巣におけるDDR2高発現症例は、低発現症例にくらべて有意に予後が悪いことを明らかにした(図左)。また、DDR2の特異的阻害剤であるダサチニブは、既に卵巣がんの治療薬として知られるが、同薬剤が胃癌の腹膜播種においても極めて有効であることをマウスの動物実験にて明らかにした(図右)。  この研究により、胃癌の末期像とかんがえられている腹膜播種の進行を少しでも制御し、生命予後の改善に寄与することが期待される。また、本研究の様に、近年の技術革新およびビッグデータ解析により既存の薬効とは異なる適応がみつかる、いわゆる「ドラッグリポジショニング」が注目されている。十分なエビデンスを集めた後、速やかに保険適応の拡大が認可されることが期待されます。