免疫・血液・代謝内科

診療内容

関節リウマチ・膠原病

関節リウマチをはじめとする自己免疫性疾患は、免疫の細胞が自分自身の体を攻撃することによって起こります。免疫学の研究の発展とともに治療法は確実に進歩しています。「九大温研」の時代から、当科は専門施設として多くの患者さんを診療してきました。充実した施設と医療スタッフのもとで、最新の薬物療法・リハビリテーション・患者教育など総合的な診療を行っています。関節リウマチにおいては、診断面では関節エコーやMRIを用いた画像診断を活用しており、治療面では、合成抗リウマチ薬、生物学的抗リウマチ薬(TNFα、IL-6、CTLA-4を標的とする治療薬)に加え、新たに登場した標的型合成抗リウマチ薬(JAK阻害薬)による治療を行っています。ご高齢の方にも安心して治療していただけるように治療開始前の全身精査と慎重な適応の検討を行っています。新規治療法は関節リウマチにとどまらず他の自己免疫疾患にも拡がっており、生活の質や臓器の機能を維持した治療が可能になっています。当科では新規治療を含めた様々な治療オプションを揃え、お一人お一人に最適な医療を提供することを目指しています。

血液疾患

血液疾患の多くは「血液細胞を産生する骨髄の病気」です。近年の血液学の進歩により、治療薬や治療法はめざましい進展を遂げています。当科ではとくに、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫を中心に化学療法と放射線療法を行っています。再生不良性貧血や溶血性貧血、特発性血小板減少症などは免疫異常に基づく疾患で、全身性エリテマトーデスなどの膠原病に合併することもあります。リウマチ・膠原病に合併する血液疾患、血液異常についても診療を行なっています。

固形悪性腫瘍(がん)

がんに対する薬物療法(抗がん剤治療)は近年急速に進歩しています。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新規薬剤や新規治療レジメンが登場し、薬物療法の選択や副作用管理を行う上でより高度な専門知識が必要となってきています。当科では、消化器がん(食道がん・胃がん・大腸がん・胆道がん・膵がんなど)・乳がん・肺がん・甲状腺がん・原発不明がんなど、様々な種類のがんを対象として、がん薬物療法専門医が薬物療法を中心に診療を行っております。当院では腫瘍内科・外科・放射線科・病理部など関連する診療科が集まり、がん診療カンファレンス(キャンサーボード)を定期的に行い、個々の患者さんにとって最適と考えられる医療を提案できるよう努めて参ります。最近では乳がんの患者さんを数多くご紹介いただく機会が増えていますので病院内のマンマチーム(乳がん診療グループ)の一員として看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなどとともに乳がん診療の質の向上に取り組んでおります。特に免疫チェックポイント阻害薬の使用機会が増えており、irAE(免疫関連有害事象)に遭遇する頻度も上がってきているため薬剤師とともに患者さんの診療内容を確認しながらいち早くirAEに対処できるよう努力しています。また、がん患者さんは診断された時点で身体的・精神的・社会的苦痛を抱えられている方が少なくありません。早期より適切な緩和医療を提供し、患者さんとその家族の生活の質(Quality of Life:QOL)が向上するようサポートを行って参ります。

遺伝性血管性浮腫

遺伝性血管性浮腫(HAE) は、眼瞼、口唇、咽頭や四肢、消化管などに発作性に浮腫を生じる疾患で、補体経路の抑制因子であるC1 インヒビター(C1INH)の遺伝的変異によって起こります。多くの場合浮腫は数日で自然消退しますが、消化管に生じると激しい腹痛を起こしたり、咽頭に生じると呼吸困難や窒息に至ったり重大な状態を引き起こす可能性があり、十分な注意が必要です。希少疾患であるためどこを受診してよいかわからず、適切な治療が受けられていない場合も多くあります。アレルギー機序によっておこる浮腫との鑑別も重要です。最近は急性発作時の治療のみならず、短期的さらに長期的に発作を予防することが可能となっており、生活の質の向上が期待できます。当科では本疾患の診断・治療を行っています。

遺伝性血管性浮腫

感染症

感染症は病原微生物が体に入ることによって引き起こされる疾患です。病原微生物には細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など様々であり、原因微生物によって薬も異なります。特に糖尿病や腎不全など免疫力が低下している人は感染症にかかりやすく、重症化もしやすくなります。また、血液疾患、固形悪性腫瘍、リウマチ性疾患は治療により、免疫力低下をきたします。内科かかりつけの患者染症を発症した際には専門的に治療のサポートを行います。また外科や整形外科からのコンサルテーションも承っており、抗菌薬の適正使用に取り組んでいます。COVID-19については入院患者間で蔓延しないよう対策を講じており、外来患者に関しても重症化リスクに応じた治療を提供できるようアドバイスを行っています。

感染制御室は多職種から成る感染対策チームであり、院内感染対策として院内感染ラウンド、医療連携カンファレンスなどを開催し、情報共有を行っています。